【解答】令和2年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題1

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問題1は、5つの選択肢のうち他と性質の異なるものを選びます。問題文の【 】で、どの観点で識別すればいいかヒントがあるので、時間をかけずにどんどん解いていきましょう。

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(1)【調音点】

音声記号の調音点です。

1、[θ] 無声歯摩擦音
2、[m] 有声両唇鼻音
3、[b] 有声両唇破裂音
4、[ɸ] 無声両唇摩擦音
5、[p] 無声両唇破裂音

1以外は調音点が両唇です。よって、答えは1です。[θ]は英語でいうとthの発音ですね。2、3、4は発音時に両唇が触れます。

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(2)【ガ行音】

ガ行音とは、鼻濁音です。少し鼻にかかったガ行の音のことです。鼻濁音になるにはルールがあって、覚えておくべきは、語頭は鼻濁音にならないということです。

2の「ぎじゅつしゃ」は「」が語頭にきているので、鼻濁音にはなりません。よって、答えは2です。

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(3)【アクセント型による弁別】

アクセントの位置を変えて、単語の意味が変わるかどうかを調べてみましょう。

1 かき 柿(低高) 夏季(高低)
2 はし 橋(低高) 箸(高低)
3 あき 空き(低高) 秋(高低)
4 いし 石(低高)医師(高低)
5 かぜ 風(低高) 風邪(低高)

5を見てください。「風」と「風邪」はアクセントが同じです。1〜4は、アクセントの位置で単語を区別することができますが、「かぜ」と言われただけでは、それが「風」なのか「風邪」なのか分かりません。
「今日はかぜが強いですね」と言われたら、「ああ、風のことを話しているのか」と文脈で判断が出来ます。よって、答えは5です。

(4)【音便】

音便とは、発音しやすいように語中や語末で起きる音の変化です。
音便の4種類を復習しましょう。

  • ウ音便:ありがたい→ありがとう
  • イ音便:咲く→咲いて、書く→書いて
  • 撥音便:「ん」飛ぶ→飛んで、遊ぶ→遊んで
  • 促音便:「っ」買う→買って、持つ→持って

一瞬で判断するには、動詞を「て形」にしましょう。
1 書く→書いて  ・・・イ音便
2 蹴る→蹴って  ・・・促音便
3 話す→話して  ・・・音便化しない
4 住む→住んで  ・・・撥音便
5 洗う→洗って  ・・・促音便

「話す」は音便化していません。よって、答えは3です。

(5)【音読みの種類(漢音・唐音)】

漢音か唐音のどちらか、という問題です。音読みか訓読みならわかりやすいのですが、音読みのうちさらに・・・となると難しいですよね。

  • 漢音:音読みのうち最も多い 「行」:コウ行動
  • 唐音:音読みのうち最も少ない 「行」:アン行脚
  • 呉音:仏教用語に多い 「行」:ギョウ行事

1 体 漢音
2 扇 唐音
3 学 漢音
4 章 漢音
5 降 漢音

2の「扇子」や「様子」は「子」を「す」と読みます。この「子」は、中国語では接尾語として使われることがあり、実質的な意味はありません。1文字目で意味は完結していて、「子」は接尾語にすぎません。
漢音と唐音の区別方法は、ざっくり言うと、珍しいほうが唐音です。「子」の漢音は、「し」です。「妻子」「種子」「女子」など、割と見つけやすいです。よって、答えは2です。

(6)【異字同訓】

異字同訓とは、訓読みは同じでも、漢字が異なるもの。例:熱い、暑い、厚い

選択肢で、同じ訓読みで漢字が違う単語があるか見ていきましょう。

1 切 切る・・・着る、斬る
2 興 興る・・・怒る、起る
3 採 採る・・・取る、撮る、摂る
4 収 収める・・・納める、治める
5 届 届く・・・なし

5「届」は、異字同訓がないことがわかります。よって、答えは5です。

(7)【心理動詞の格】

「心理動詞」というのは、その字の通り、人の感情を表現する動詞のことです。でも、「心理動詞」がなにかわからなくても、この問題は解けます。
では、「格」とはなんでしょうか?

格とは、名詞が他の単語を結ぶ関係を表す文法的な機能のこと。
格助詞」が、を、に、へ、と、から、より、で、まで 覚えましょう!

(7)は、選択肢の動詞には、どんな格助詞が付くでしょうか?

1 あきれる  例:自分にあきれる
2 あきらめる 例:追跡をあきらめる
3 したう   例:先生をしたう
4 うたがう  例:友達をうたがう
5 うやまう  例:父親をうやまう

例文を作ると、1「あきれる」だけが、格助詞「に」を取り、「を」を取ることは出来ません。よって、答えは1です。

(8)【ニ格名詞句の意味

選択肢を見ると、4「田中さんに財布を預ける」は、田中さんが着点になっていますが、他の選択肢は、「に」が起点になっていてます。選択肢1、2、3、5の「に」は「から」と言い換えることが出来ます。よって、答えは4です。

【こんなイメージ・・・】
1 小林さん →→書道→→ わたし  (○)小林さんから書道を習う。
4 田中さん ←←財布←← わたし  (×)田中さんから財布を預ける。

(9)【「とても」の意味】

「とても」の意味は2種類を覚えおくと、すぐ答えが出せます。
1、非常に、大変
2、どのようにしても実現しない気持ちを表す。=とうてい

「とても」を「とうてい」に入れ替えると、選択肢2だけが成立しません。2「とてもつまらない」は、非常につまらない、という程度がはなはだしいさまを表しています。よって、答えは2です。

(10)【肯定否定の対立】

選択肢を否定表現にしてみると・・・

1 (○)挨拶しません
2 (○)訪問しません
3 (○)連絡しません
4 (×)失礼しません
5 (○)面会しません

人の家へ上がるときに「失礼します」とは言いますが、「失礼しません」と言う表現は使いません。よって、答えは4です。

(11)【「てくる」の用法】

「てくる」の用法

  • 変化  例:だんだん参加者が増えてくる
  • 移動  例:愛犬がこちらに走ってくる

何かが変化しているのか、それとも移動しているのかを考えます。

1 荷物の移動
2 お客さんの移動
3 弁当の移動
4 米の移動
5 気温の変化

選択肢5は、季節の移り変わりのことで、目に見える物体が動いているわけではありません。よって、答えは5です。

(12)【条件節の意味】

条件節「ば」の用法

  • 仮定条件:「もし/if」が似合う。例:天気がよければ、向こうに島が見えます。
          →裏の意味:天気がよくなかったら、島は見えない。
  • 一般条件:真理、よくあること、反復、習慣など。例:春になれば、桜が咲きます。

選択肢2〜5は、「もし〜」とつけても不自然になりませんが、1は不自然です。
必ず明日は来るので、1は一般条件の真理です。
1 (×)もし明日になれば〜 

よって、答えは1です。

(13)【身体部分を含んだ表現の意味】

慣用句かどうかの問題です。文脈から判断して、実際にその行為をするのであれば、慣用句とは言えません。

身体の慣用句例:頭が上がらない、面の皮が厚い、顔が立つ、目をつける、耳が痛い、鼻がきく、口がうまい、舌が肥える、首が回らない、腕がなる etc…

1 腹を割る ・・・隠さずに本音で話す(慣用句のみ)
2 口を挟む ・・・他人が話しているところに割り込んで話す(慣用句のみ)
3 足を洗う ・・・汚れた足を水で洗ってきれいにする
4 手を出す ・・・新たな物事を始める
5 耳を貸す ・・・人の言うことを聞く(慣用句のみ)

選択肢3「足を洗う」は実際に足を洗う行為を指します。「足を洗う」の慣用表現は、悪いことを辞めるという意味ですが、文脈からして今回は慣用表現ではないと判断できますね。よって、答えは3です。

(14)【ト格の意味】

格助詞「と」

  • 並列 例:コーヒーとサンドイッチを買う。
  • 同伴 例:彼と映画を観に行く。
  • 必須補語の相手 例:彼と結婚しました。
  • 引用 例:先生は明日の授業は休みですと言いました。
  • 変化の結果 例:水をやると花が咲いた。

今回のポイントは、「必須補語の相手」です。これは、相手いないと成立しない動詞の二格です。例えば、結婚する、離婚する、ケンカする、などは必ず相手が必要です。同伴の「と」なのか、必須補語の「と」なのかを区別するには、「いっしょに」を付けます。「いっしょに」を付けて文が成立すれば、その「と」は同伴の「と」です。

1 ジョンとポールがいっしょにテレビを見た。
2 ジョンとポールがいっしょに楽器を弾いた。
3 ジョンとポールがいっしょに歌を歌った。
4 ジョンとポールがいっしょに酒を飲んだ。
5 ジョンとポールが(×)いっしょにけんかをした。

5の「けんかをする」は必ず相手が必要なので、「いっしょに」は付けられません。
よって、答えは5です。

(15)【直示表現(ダイクシス】

直示表現(ダイクシス)
語の意味が文脈に依存して決まる表現のこと。同じ表現でも、視点によって意味が異なる

例:代名詞(わたし、あなた)、指示語(ここ、あそこ)、時間(さっき、明日)

「わたしは今日ここで仕事をします。」
という文があったとして、わたしが今日自宅で言えば、「わたし=Mai」「今日=2021年9月2日」「ここ=自宅」です。
でも、花子さんが明日言えば、「わたし=花子さん」「今日=2021年9月3日」「ここ=花子さんの自宅」となり、同じ語でも意味が全く異なります。

選択肢3は「そこ=駅」です。誰がいつ歩いても、そこは常に駅なので、ダイクシスではありません。選択肢5「川の向こう」は川を挟んでどちらにいるかによって、対岸は異なります。よって、答えは3です。

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