★カナルの考える伝達能力
1 文法能力:文法的に正しい言語を使用する能力。
例:文法、語彙、発音、文字
2 社会言語能力:相手との関係や文脈、状況などに即して適切に言語を使用する能力。
例:スピーチスタイルの変更、話題の変更
3 ストラテジー能力:コミュニケーションがうまくいかなかったとき、言い換えあるいはジャスチャーなどで修復する能力。
例:言い換え、説明、聞き返し、母語、笑ってごまかす
4 談話能力:話の意図をくみとって、会話を進めていく能力。
例:会話の始め方・終わらせ方、相づち、発言の順番、話題の転換
問1
「談話能力を高める指導」の例はどれでしょうか?
1 表情や体の動きなどの非言語行動
→これは、ストラテジー能力です。よって、×です。
2 会話の相手や会話の場面に合った表現
→相手との関係や文脈、状況に即した表現を考えているので、社会言語能力です。よって、×です。
3 自分の発音の不自然な点
→正しい発音に直させるのは、文法能力です。よって、×です。
4 相づちやそのタイミングに気づかせる
→日本語は相づちが多い言語と言われていて、どのタイミングで適切に相づちをうつかは、談話能力です。よって、○です。
よって、正解は4です。
問2
次は、「コミュニケーション・ストラテジー」の例です。
「コミュニケーション・ストラテジー」は、コミュニケーションがうまくいかなかったときにする方略(ストラテジー)のことです。
1 学んだ表現をメモする
→これは、学習ストラテジー(記憶ストラテジー)です。よって、×。
2 言いたいことが目標言語で言えないときに、母語を直訳
→目標言語で言えない(コミュニケーションがうまくいかない)ときに、母語を直訳する(別の方策で伝える)ので、コミュニケーション・ストラテジーです。よって、○です。
3 自分の発言を訂正されたら、その表現を繰り返す
→これも、学習ストラテジー(記憶ストラテジー)です。よって、×。
4 新しく習った表現を実際の会話の場面で積極的に使う。
→コミュニケーションがうまくいっていないわけではないので、これも学習ストラテジー(認知ストラテジー)です。よって、×。
よって、正解は2です。
問3
「書く活動においてもコミュニケーション能力の養成を意識した活動」の例として、
不適当なものを選びます。
選択肢1〜3は、伝えたい相手がいます。友達、上司、アンケート収集者です。
コミュニケーションをするには、相手が必要です。
では、選択肢4はどうでしょうか?書いた物語を見せる相手がいなくても、再構築した物語は書くことができます。よって、これが不適当です。
よって、正解は4です。
問4
「プロフィシェンシー」とはなんでしょうか?
英和辞典で調べてみました。
proficiency :
〔能力・技能などの〕熟達、堪能
簡単にいうと、実生活での日本語の運用能力のことです。
選択肢1〜4をみてみると、どれも大切な能力なので迷います・・・
ポイントは、「運用能力」です。その場で実際に使えるかどうかです。
選択肢3は、「場面や状況に合わせ適切に言語を使う能力」です。実際に、言語を運用しているので、これが○です。
よって、答えは3です。
問5
「語用論的転移」の例を選びます。
語用論:
文法的な正しさではなく、状況や背景、相手の文化に応じた正しい言葉選びの研究。
日本語は、言葉として表現された内容よりも、言葉以外の状況や文脈に重要な意味を含むので、「高文脈の言語」と言われています。つまり、「察しの文化」です。
例:A「この部屋暑くない?」
B「窓開けようか?」 (普通「そうだね、暑いね。」とは言いません。)
母国の文化や常識を、そのまま目標言語に持ち込んでしまうと、ときにコミュニケーションがうまくいかない場合があります。このことを、「語用論的転移」といいます。
1 「今年就職ができないとすると、国へ帰るつもりです」
→「今年就職ができなければ」など文法的な間違いなので、×です。
2 「プレゼントをもらって驚愕しました」
→英語の[I’m surprised that~]を直訳した結果なので、文法的な間違いです。よって、×です。
3 「その日は約束があるから行きません」
→日本では、目上の人の誘いを断るときははっきり言いません。「その日はちょっと・・・」など、ぼかした表現が多いです。国の文化による違いなので、これが「語用論的転移」です。よって、○です。
4 「はっきりと、honestlyに言うね」
→「正直」がわからず母語を使ったので、コミュニケーション・ストラテジーです。よって、×です。
よって、答えは3です。